洋楽や邦楽の一部として含まれることも多いラップ。
その中でも互いに即興で生み出したラップを披露し合うフリースタイルラップは、テレビ放映されたフリースタイルダンジョンの影響もあってか知名度が高まりつつあり、私も友人達と夜な夜なバトルを繰り広げたことがあります。
中には、「自分もラップを初めてみたい!」という方もいるでしょう。
そんな方におすすめできるのが「サイファー」で、フリースタイルダンジョンの番組内でも披露されています。
ですが「サイファー」ってあまり聞き慣れない言葉ですよね。
今回はそんなサイファーの意味ややり方、初心者の方が楽しむためのコツについて紹介しましょう。
サイファーってどんな意味?
ラップにおけるサイファーとは、複数のラッパーが輪の形に並び音楽(ビート)に合わせて次々と即興のラップを披露することを呼びます。
サイファーという言葉はアラビア語で「数字の0」という意味があり、輪に並ぶラッパーたちの様子を0に例えてこの名がついたと言われています。
フリースタイルダンジョンでも有名な対戦形式のMCバトルとは異なり、サイファーには基本的に勝敗はありません。
また、順番にラップを行う場合もあれば、都度割り込み形式でラップを披露する場合もあるなど決まったルールはなく、その時々で自由に実施されています。
互いにラップを披露し交流しながら、良い歌詞(リリック)や押韻(ライミング)、曲・歌詞にマッチした抑揚(フロウ)を賞賛するなどして楽しむ、レクリエーション的な要素が強いのが特徴です。
なお、有名ラッパー達がクラブやライブハウスを貸し切ってラップを披露する場合や、居合わせたラッパー同士でMCバトルを繰り広げる場合もあり、広義ではこれらも含めてサイファーと呼ぶことがあります。
有名なサイファーについて
大都市圏を中心に、著名なラッパーが主催している、あるいは定期的に開催されているなどして有名なサイファーがいくつか存在しています。
- 渋谷のハチ公前を中心に行われている渋谷サイファー
- 原宿の代々木公園などで行われている原宿サイファー
- 横浜の川崎駅を中心に行われている川崎サイファー
- 大阪・梅田駅を中心に行われている梅田サイファー
などがその一例です。
ちなみに、CDをリリースするなどし大ヒットしているラッパーのR-指定さんは梅田サイファーのメンバーでもあります。
これらのサイファーでは、有名ラッパーに地元のラッパーはもとより、他地域から遠征してくるラッパーや、居合わせた外国人観光客などが飛び入りで参戦し場を沸かせることもある、一種の名物にもなっています。
ダンスにもサイファーが存在する
サイファーはラップだけのものではなく、ダンスにおいても同様に行われています。
形式はラップのそれとほぼ同じく、輪になったダンサーたちが音楽に合わせて即興でダンスを披露するものです。
最低限のマナーはあるにせよ、場所を選ばずに多人数で楽しむことのできるサイファーはダンサーたちのコミュニケーションやスキルアップの場として親しまれています。
サイファーのやり方
サイファーのやり方は至ってシンプル。
- 駅前や公園に集まり、
- 輪の形に並び、
- スマートフォンなどで音楽を流し、
- 順番にラップを披露すれば、
それはもう立派なサイファーです。
付け加えるならば、他のラッパーの素晴らしいラップは歓声やジェスチャーで賞賛し、場を盛り上げるのが理想的です。
サイファーを行うにあたっては、スマートフォンや音楽プレーヤーといった音源さえあれば他に特別な道具は必要ありません。
一定の音量が許される場所であれば、マイクを用意するとより臨場感のあるサイファーになるでしょう。
個人的には費用はかかるものの、設備が整っており音量を気にする必要がないカラオケボックスでサイファーを行うこともおすすめします。
決まったルールはありませんので、1曲が終わるたびに仕切り直すもよし、複数の曲を繋げて長期戦を楽しむのもまたよしです。
初心者も楽しめる!サイファーのコツ
サイファーはバトルではないため、ラップを始めたばかりの初心者でも上手い下手を気にせず楽しむことができるのが良い点です。
また有名ラッパーや上級者が多数参加している場合も少なくないため、質の高いラップを聞いて勉強する、参考にすることでスキルアップも期待できます。
とはいえ初めて参加するには勇気がいるもの。
初心者の方がサイファーを楽しむために、最低限押さえておくべきポイントを5つ紹介しましょう。
ビートの切れ目を理解する
通常ラップに使用される音楽は4拍子であり、8小節、もしくは16小節が一つの切れ目となっていることが大半。
サイファーにおいて次のラッパーに順番が移るタイミングも上記いずれかの切れ目である場合が多いでしょう。
これらと違うタイミングでラップを終えてしまうと、次のラッパーがうまく始められず、沈黙が続いてしまう原因となります。
そのためある程度拍子と小節は数えておき、仮に詰まってしまったとしても、切れ目のタイミングまでは精一杯言葉を発するようにしましょう。
失敗を恐れず、自信を持ってラップする
慣れないうちは、まずは恥ずかしがらずラップすることが大切です。
恥ずかしがってラップを止めてしまうと、音楽だけが流れる時間が続き、場のボルテージが下がってしまうでしょう。
普段は相手の顔色を伺ってしまい、会話が苦手…という方でも、ラップでは気にする必要なし!
最後まで、さも自信満々であるかのようにやり切りましょう。
ライミング(韻を踏むこと)よりもビートに乗ってラップする
上手なライミングは、オーディエンスを盛り上げるラップの花形とも言えますが、ライミングばかりを気にしてしまうと、言い淀んでしまったりビートに遅れる原因に。
ラッパー界隈ではこのような現象を、「韻に踏まれる」といいます。
そのため韻を踏むことよりも、まずは思い浮かべたリリックをビートに乗って歌い切る意識を持つ方が、ラップらしく聴こえることでしょう。
他のラッパーのリリック(歌詞)を拾う「アンサー」
複数人で行うラップで、相手のリリックを踏襲してラップを行うことを「アンサー」と呼びます。
次の動画で行われているサイファーは、非常にアンサーが意識されていることが伝わるのではないでしょうか。
アンサーには即興性が最も強く現れるため、相手のリリックを踏まえつつ同意や反論、ディスり、揚げ足取りができることが優れたラッパーに求められる要素です。
そのため、最後まで相手のラップに耳を傾けつつ、次なるリリックを組み立てる必要がありますが、慣れないうちは「相手が使った単語を1つ、自分のリリックにも含める」くらいの意識でも良いでしょう。
特にサイファーはバトルと違い、他のプレイヤーの掛け合いに耳を済ませる時間があるため、ラッパーに必要な頭の回転を鍛えるトレーニングにもなります。
最低限のルールやマナーを守る
サイファーに限った話ではありませんが、度を超えた大声や暴力、ゴミの放置といった迷惑行為はもちろん厳禁。
飲酒や喫煙についても会場のルールを遵守せねばなりません。
また、サイファーによっては独自のローカルルールが定められている場合もあるため、初めてのサイファーに参加する際は事前にルールを確認しておく、あるいはまずは観戦し、ラッパーたちの振る舞いを見てから輪に入ることが望ましいでしょう。
楽しくラップの技術を磨けるサイファー
初心者の方の中には、サイファーに参加したいと思っても怖い、敷居が高いと感じる人もいるでしょう。
しかしながらサイファーは、一期一会の出会いの中でラップでの交流を楽しみ、かつラップに求められるさまざまな技術を磨くことができる一石二鳥の練習方法です。
普段は仕事で丁寧な言葉遣いやマナーを強いられる方々にとって、自由にラップを披露できるサイファーは絶好の気分転換になること間違いなし。
少しでも興味を持ったらぜひ勇気を出して、サイファーの場へ足を運んでみてください。