消防斧(消火斧)とは?日本にもある?使い方次第の「マスターキー」

日本でも非常に強い人気を誇る映画の1つが「タイタニック」ですね。

そんなタイタニックには、非常用ボックスから取り出した斧で障害物を破壊するシーンがあり、「なんだこれ?」と思った人もいるのではないでしょうか。

今回は防災斧や消火斧などと呼ばれている、あまり馴染みのない防災用の斧について紹介します。

目次

消防斧(消火斧)とは

消防斧(消火斧)とは、その名の通り消防、あるいは防災を主な目的として使用される斧。

一般的な斧と似た形状を持ちますが、防災に特化し、あるいは一般の人にも取り回しやすいよう商品によって

  • 非常時にも目立つよう赤色で塗装されている
  • 軽量化が施されている
  • 片手でも使用できるサイズで作られている
  • 刃や柄の部分にさまざまな機能が加えられている
  • 火花の発生を抑え、粉塵爆発などの二次災害を防止している

といった特徴があります。

アメリカの消防士にはよく使われている

日本では見慣れない消防斧ですが、アメリカの消防現場においてはしばしば使用されており、斧を扱う力と技術は消防士に必須の要素であるとも言われています。

特にアメリカにおいては、倒壊した建物の屋根を破壊して内部を捜索する手法が取られていることから、斧が使用されるケースが多いそう。

斧だけでなく、バールやチェーンソーが使用されることもありますが、バールより破壊力で勝り、チェーンソーよりも取り回しが容易な斧は多くの消防士に愛用されているんです。

消防斧は日本にもある!

実は過去の、あるいは現代の日本においても斧は活用されています。

歴史を振り返ると、斧が積極的に使用されていたのは江戸時代。

江戸時代には消火技術が未発達であったため、消防というと「家屋を破壊して延焼を食い止めること」に重きが置かれていました。

そのため、破壊力の強い斧は火消しに重宝されたと言われています。

現代では消火技術や防災設備が発達したため、「破壊」が必要となる火災は減少していますが、それでも消防署や消防車には斧が備え付けられており、消防士が携帯できるようになっているのです。

また、消防署や消防士に限らず、地方自治体の防災組織においても斧を用意し、実際の防災使用を想定している場合が少なくありません。

実際に消火・防災設備工事の設計・管理や、消火器具の販売を行っているヤマトプロテック株式会社においても、町内会・自治会レベルの防災設備として斧を準備しておくことが推奨されています。

俗に「マスターキー」と呼ばれるらしい

ちなみにこのような防災斧が、巷では「マスターキー」と呼ばれていることをご存じですか?

マスターキーは宿泊施設などでよく耳にする、「全ての部屋を解錠することのできる鍵」ですが、「防災斧があれば全ての部屋のドアをぶっ壊せる」という意味でマスターキーと呼ばれているそうです。

斧の他に、ショットガンが鍵の破壊に使用されることもあり、こちらも同じくマスターキーと呼ばれることがあるそう。

あらゆるドアを開けられるという意味ではマスターキーと言えなくもないんですが…ちょっと笑ってしまいますよね。

消防斧の用途・使い方

ここまでにも一部紹介しましたが、実際に消防斧がどのような局面で利用されるのか、もう少し細かく見ていきましょう。

壁やドア、窓を破壊し避難路を確保する

主要な用途はやはり、障害物を破壊し脱出口を開くこと。

特に火災現場では高熱による変形や倒壊によりドアが開けられないケースが少なくないため、ドア、もしくは壁を壊すことの重要性は非常に高いと言って良いでしょう。

また、戸建のような比較的低い建物であれば、窓を割って飛び降りるという選択肢もありますよね。

消防斧には刃の反対側がピック状になっているものも多く、窓の破壊にも一役買ってくれるようになっています。

火の周りのものを破壊し、延焼を防ぐ

江戸時代の火消しさながら、火元と可燃性の構造物を切り離し、延焼を防ぐ手法は破壊消防や破壊消火と呼ばれています。

木造住宅で、火元に近い柱や梁を壊してしまうのがその例ですね。

斧は重量と切れ味の2つの要素を併せ持ち、その破壊力は一般的な工具ではなかなか再現できません。

打ち付ける事による安全確認

斧の形状によっては、打ち付けて床面の安全確認を行うことにも使用可能。

火災現場においては、床面が燃えてしまう、あるいは消火用水が染みることによって足場が不安定となることがあります。

特に2階以上の建物で救助を行う際は、足場が崩落してしまえば消防士自身も非常に危険ですよね。

このような場合に、一定の重量がある斧を打ち付けることにより、足場に安全な救助活動が行える程度の強度が残っているかどうかを確認することができます。

ガレキの下敷きになった人の救助

斧は長い柄を持つことから、その柄の部分を救助に活用することもできます。

柄の部分を使って堆積したガレキを掘り起こしたり、柄の部分をガレキの隙間に差し入れることにより要救助者を探すなどなど。

消防士の救助活動であれば、このような用途に特化した別の道具を使用する手もありますが、十分な種類の道具を揃えておくことが難しい一般家庭の防災であれば消防斧はその多機能性を発揮してくれることでしょう。

普通に斧として薪割りなどに使う

消防斧は防災道具であるとともにシンプルに「高機能な斧」なので、日常生活に使用しても便利でしょう。

とりわけ薪ストーブや薪ボイラーを愛用している方にとって薪割りは大変な作業。

柄の軽量化が施されている消防斧では、そんな薪割りの苦労も軽減してくれます。

消防斧には一定の長さ・重量があるものが多く、キャンプなどの持ち運びには適していない点だけが少々残念ですね。

一家に一丁、消防斧を。

消防斧がいかにして活躍しているか、活用されているかを知っていただけたのではないでしょうか。

家庭で消化器や防災用具を準備している方は多いと思いますが、消防斧を持っている!という方はかなり珍しいでしょう。

しかしながら非常事態において、消防斧は文字通りの「突破口」になる可能性もありますし、斧を握ることで危機から逃れる勇気を奮い立たせてくれるかもしれません。

皆さんもこの機会に一家に一丁、消防斧を準備しておくのはいかがでしょうか?

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