力太郎は「垢(こんび)」=汚い…あの話の結末と教訓って何だろう?

桃太郎に金太郎、浦島太郎など、「太郎」が主人公として活躍する童話は数多く存在します。

いずれもファンタジーの要素と、子どもにもわかりやすいストーリーが魅力ですが、これらと並び「力太郎」という物語をご存知の方も多いのではないでしょうか。

そしてそのような方々の中には、「力太郎って主人公だけど『汚い』…」という思っている方もいるかもしれません。

今回はそんな力太郎について見ていくことにしましょう。

目次

力太郎ってどんな話?

「力太郎」は宮沢賢治が1929年に発表した作品で「垢太郎(あかたろう)」や「こんび太郎」とも呼ばれ、近年でも国語の教科書においても採用されている物語です。

宮沢賢治は同じく国語の教科書に掲載されていることの多い「やまなし」や「注文の多い料理店」といった作品で有名な童話作家で、詩人や教師、科学者、宗教家に加え、農民の生活向上を目指し団体を立ち上げ活動するなど、多方面において活躍したことが知られています。

力太郎のあらすじ要約・結末

掲載図書によって若干の違いはありますが、力太郎のあらすじは概ね次のようになっています。

あるところに住むおじいさんとおばあさん。

二人は貧しいために風呂に入ったこともありません。

そんな二人が風呂に入ると大量の垢が。

二人には子どもがいないこともあり、垢で人形を作ると、その人形が動き出したため力太郎と名付けて育てました。

大きくなった力太郎は、自分の力でどれだけ人の役に立てるのかと旅に出ます。

力太郎は道すがら他の力自慢と力くらべをし、仲間にしていきます。

ある時たどり着いた村で、村人たちが化け物に困っているという話を聞き、力太郎は化け物と戦い、無事勝利。

そして村人である娘と結婚し、おじいさん、おばあさんを呼び寄せ、お礼として振る舞われたたくさんの食事を食べながら幸せに暮らしました。

以下のサイトで全文を読むことができるため、併せてご覧ください。

力太郎って汚くね?という疑問

数多くの童話の例に漏れず、ハッピーエンドを迎える力太郎ですが、その出立ちからして「力太郎ってめっちゃ汚くない?」と思う方が少なくないようです。

全身が垢でできている

力太郎は人間ではなく、人間の「垢」から生まれた存在だとされています。

垢といえば爪垢やフケで知られるような老廃物で、一般的にも綺麗ではない、むしろ汚い存在。

力太郎はその体の全てが垢でできており、また垢の出どころが「お風呂に入っていない人」なので、なおさら汚いと感じることでしょう。

あるいは仮に力太郎自身が風呂に入るようなことがあれば、跡形もなく消滅してしまうかもしれません。

力太郎を作るには9ヶ月かかるらしい

余談ですが、人間の垢から新生児に近い3kgの垢を取ろうとすると、約9ヶ月間風呂に入らずに垢を溜め続ける必要があるそうです。

このことは様々な漫画や物語を科学的に検証することで有名な「空想科学読本」Web版に記されています。

現在ではこのサイトは閉鎖されていますが、9ヶ月という決して非現実的な期間を考えると、「力太郎と同じような垢人形」を作ること自体はさほど難しくないんですね。

力太郎の話の教訓はなんだろう?

力太郎の汚さが気になって仕方がないこの話ですが、この話を通して伝えたい教訓はどんなものでしょうか。

国語の教科書に採用されることもあり、子どもの成長に重要なことが隠されているはずその教訓について考えていきましょう。

例え貧しくても、子どもには尽くすべき

力太郎はおじいさんおばあさんにたらふくご飯を食べさせてもらうことで成長しました。

お風呂に入ることもできない老夫婦が子どもに子どもにたくさんのご飯を食べさせるということは、決して容易なことではないでしょう。

貧しいからといって子どもにもその生活を強いるのではなく、自分達が我慢をしてでも子どもを大切にしようという心が、力太郎というヒーローを産んだことは間違いありませんね。

人を打ち負かすだけでなく、仲良くすべき

力太郎は道すがら、他の力自慢と出会い打ちまかしつつも、お供としてともに旅をしました。

決して「自分の方が強い」ことを誇り他社をいじめるのではなく、相手の力量を認めつつ仲良くしているわけですね。

足が早い、テストの点数が良い…どうしても個人差が目立ち、それが関係性に繋がりやすい子どもたちに、他者の良いところを見ること、仲良くすることの重要性を伝えようとしているのかもしれません。

自身の持つ力を、人のために使う

力太郎は化け物を退治できるほどの力の持ち主ですが、それを自分のためだけに使ったとしたらどうでしょう。

きっと力太郎自身が「化け物」として人々から恐れられることになることになるでしょう。

自身の持つ力、得意なことを人のために発揮することが学校で、あるいは社会において求められることであると、この物語から伝わってきますね。

親孝行の心

力太郎は化け物を退治することで村人から得たお礼を、自分だけで独り占めするのではなく、自身を育ててくれたおじいさんおばあさんと一緒に受け取り幸せに暮らしました。

この姿はまさに「親孝行」のあるべき姿と言って良いでしょう。

自身を育ててくれた恩を忘れず、自身が立派になった時にはお世話になった親にそのお返しをするべき。

子どもの将来を決定付ける教育の現場において、伝えるべきことなのは間違いありません。

素直に読めばとてもいい話

「垢でできた人形なんて汚いじゃん」という感想が先行してしまいがちですが、よくよく読み込んでみると大人になっても大事な教訓がいくつも含まれているのが分かるのではないでしょうか。

童話自体、非現実的な話が多いものですが、そのような中にも現実で活きる内容が多数含まれているのが良いところ。

力太郎ももちろんとてもいい話なのですが、だからといって垢は溜めることなく、きちんとお風呂に入って体は清潔にするようにしましょうね。

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