人差し指の向き一つで勝敗が決まる「あっち向いてホイ」。
じゃんけんの勝敗と「上下左右の指の向き」で勝負するため運が重要にもかかわらず、どこか駆け引き要素も感じられるこのゲーム。子どもの遊びとしてはもちろん、大人でもなにかと熱が入ってしまうゲームですね。
そのこともあってか、なかなかあっち向いてホイに勝てない!あっち向いてホイに弱い…と感じてしまう方もいることでしょう。
今回はそんなあっち向いてホイについて、人間の骨格筋や心理面から必勝法について考察してみましょう。
あっち向いてホイのルール
必勝法について考える前に、あっち向いてホイのルールについておさらいしておきましょう。
今回は便宜上2人、1対1でゲームを行う場合に限定します。
- 2人でじゃんけんを行う
- じゃんけん勝者は「あっち向いてホイ(地域によってはこっち向いてホイ)」の掛け声とともに上下左右いずれかの方向を指差す
- じゃんけん敗者は勝者の「あっち向いてホイ」の掛け声に合わせて上下左右いずれかの方向を向く
- じゃんけん勝者が指差した方向と敗者が向いた方向が一致した場合、じゃんけん勝者がゲームに勝利する
- 一致しなかった場合、再度じゃんけんを行い役割を決め直す
これら1〜5の流れを繰り返すことで勝敗を決めるのがあっち向いてホイの基本的な流れとなります。
勝敗を分けるポイント
ルールからもわかるように、あっち向いてホイに勝利するためには、「じゃんけんで勝利すること」と「相手の向く方向を指差すこと」が求められます。
すなわち、「じゃんけんの勝率を高めること」と、「相手の向く方向を予測し、一致させるもしくは回避すること」が確率を勝敗を分けるポイントであり、必勝法を考える上で重要な点となります。
あっち向いてホイで勝つ方法
ここからは本題となる必勝法についての考察です。
ゲームのルール上、「必ず勝つ」ということはできませんが、前述した通りじゃんけんの勝率を高める方法、そして相手の向きを当てる確率を高める方法を便宜上「必勝法」として紹介します。
じゃんけんにおける必勝法
あっち向いてホイ以外でも様々な局面で遊ばれるじゃんけんは、すでに多くの研究者によって必勝法が考察されています。
これらの必勝法には大きく分けると3つの視点があり、1つ目は「出されやすい手を知る」視点、2つ目は「特にあいこになった場合に、次の手の傾向を読む」視点、そして3つ目は「相手の出す手をコントロールする」視点となります。
じゃんけんで出されやすい手
じゃんけんはグー・チョキ・パーの3つの手をランダムに出すゲームではありながら、それぞれの手を出す確率は平等でないことが統計的に知られています。
具体的には桜美林大学の芹沢光雄教授の研究結果が有名で、人間は緊張すると手を握る傾向がありグーを出す確率が高い、あるいは手を握る・開くという単純な動作であるグー・パーに対して、指を2本だけ伸ばすチョキは「複雑で出しにくい手」であり、それゆえに選ばれる確率が低いという研究結果が存在するのです。
この研究はさらに、あいこになった際の「次の手」についても言及しています。
2回以上続いたじゃんけんについてあいこの次の手に着目すると、本来3分の1であるはずの「同じ手を続けて出す」確率が実際には4分の1程度であったとのこと。
言い換えると、「あいこの場合、その際に出した手に負ける手を出すと勝率が若干高まる」ということになります。
これら2つの研究結果を総じて、「初手にはパーを出す」「あいこの場合はその手に負ける手を出す」というのがじゃんけん界におけるセオリーとなっているのです。
あるいは広く流布している説として、「不意をつきつつ、力を込めて、じゃんけんぽん!というとグーを出しやすい」という戦略を聞いたことがあるのではないでしょうか。
相手にチョキやパーを手を作る暇を与えず前述した「緊張すると手を握る」傾向を自ら引き出す戦略と考えられますね。
ただしこの戦略を知っている相手にとってはかえって警戒心を高めてしまうため、あまりじゃんけん慣れしていない相手を選んで使用することが重要となります。
あっち向いてホイの指差しにおける必勝法
じゃんけんの勝率を高めても、指差しで相手の向きを当てることができなければ真の勝利を勝ち取ることはできません。
逆にじゃんけんで負けてしまった場合は、いかに相手の指差しを回避できるかが重要。
ここからは指差しの傾向について、すでに先行研究のあるじゃんけん必勝法を参考に考察したいと思います。
人間の骨格筋からみる戦略
じゃんけんにおいては、より複雑な動作が求められるチョキの選ばれる確率が低いという結果となりました。
あっち向いてホイにおける指差し、あるいは首の向きを変える動作についても同様に「より複雑≒動かしにくい動作は選ばれにくい」という前提に乗っ取って考えてみることにしましょう。
指差しの動作についてですが、指差しは基本的に、「手首の屈曲」と「腕(肩関節)の内外への捻り」が必要となることから、それぞれの可動域(≒動かしやすさ)を元に差しやすい方向、差しにくい方向を考えることができそうです。
手首の屈曲については、手首を掌側に曲げる可動域(掌屈)は90度、手の甲側に曲げる可動域(背屈)は70度であることが知られています。
また、腕の捻りに重要となる肩関節の内旋可動域は80度、外旋可動域は60度。
ここまでを踏まえて指を上下左右に向ける動作を試してみると、右利きの方が指先を上下左右に向けようとした場合、
- 上…手首の背屈と肩の内旋
- 下…手首の掌屈と肩の内旋
- 左…手首の掌屈のみ
- 右…手首の背屈と肩の外旋
の動きが生じる場合が多いのではないでしょうか。
これらの要素と各関節の可動域の広さを鑑みると、指を差すという動作は左>上>下>右の順に指を向けやすいと考えることができ、すなわち「じゃんけんに勝った側は差しにくい右を選ばない可能性が高い」と考えることができます。
じゃんけんで負けてしまった場合は、右を向くことで多少勝率を高められるわけですね。
続いて首を上下左右に動かす場合に関してですが、人間の首の可動域は、左右60〜70度、前屈(下)60度に対して後屈(上)は50度と可動域が小さいとされています。
上を向くという動作は、成人で約5kgに達する頭部を重力に逆らい持ち上げるという負荷の高いもの。
「じゃんけんに負けた側は上向きを選ばない可能性が高い」と考えられるため、じゃんけんで勝った場合は上以外を指すと勝率を高めることができると考えられます。
心理的な面からみる戦略
続いては心理的な面から、2回目以降の指の向き、顔の向きの傾向を考えることにしましょう。
じゃんけんの例でもわかるように、人間には2回同じ手を選ぶことを避ける、つまり「偏りを避ける」行動傾向があります。
マークシート式の試験で、同じ回答が何問も続くと正しいかどうか不安になりますよね?「偏りを嫌う」という人間の傾向は、日常生活のあらゆる場面で影響を与えているものです。
あっち向いてホイについても同様に、「同じ方向を2回続けて選ぶ可能性は低い」と考えて良いでしょう。さらに上下左右4つの選択肢があることから、「相手がまだ選んでいない方向」を記憶し、3回目、4回目とそれらを潰していくことで勝率を高めることができると考えられます。
また認知心理学の視点では、脳トレなどでよく見られる「ストループ効果」をあっち向いてホイに応用することができそうです。
ストループ効果とは、ある刺激に対する反応を求められた場合、それと異なる別の刺激が同時に呈示されると、反応が遅れてしまうという認知傾向を呼びます。
「書いてある文字を読みなさい」という問題に対し、青色の文字で「赤」と書かれてしまうと、回答に時間がかかったり、つられて「青」と読んでしまうのがストループ効果が作用している一例ですね。
あっち向いてホイは本来、「相手の指先と異なる方向を向く」ことが勝利に繋がるゲーム。ですが、生物には「相手が注意を向けた方を見てしまう」という習性もあります。
ここでじゃんけん勝者が指を上下左右に向ける前から、相手の意識が自分の指先に集中していたらどうでしょうか。「相手が注意を向けた方を見てしまう」という習性に対し、「相手の指先と異なる方向を向く」という判断がストループ効果により遅れてしまうこととなり、ついつい相手の指差した方向をそのまま向いてしまうのです。
したがって、あっち向いてホイにおいて勝率を高めるためには、「相手の意識を自分に集中させる」ことが重要となります。
相手の意識を指先に集中させるためには、なんとなく指を前に出すのではなく、はっきりと相手の目の前に出し、メリハリを持って指を向けること。
これらを意識することで、自分が指を向ける方向に相手を向かせる、まさに圧倒的な勝利を掴み取れるのではないでしょうか。
あっち向いてホイ必勝法まとめ
最後にここまでの必勝法を総じて、あっち向いてホイにおける戦略を総括したいと思います。
- じゃんけんにおいては、初手はパーを出し、あいこの場合はあいこになった手に負ける手を選ぶ
- じゃんけんに勝利した場合は、相手の視界に映るようはっきりと相手を指差してから、首を向けにくい上以外の方向を指差す。
- じゃんけんに敗北した場合は、相手の指から意識そらし、相手が指差にくい右向きを向き、指差しやすい左を向くことは避ける
- 1度目で勝負がつかなかった場合、相手が指差した向き/向いた方向を記憶し、まだ使っていない方向を使ってくるものと考え次の動きを決めていく。
これらの戦略を徹底することで、あっち向いてホイの名人という名誉ある称号を得ることができるでしょう。
あっち向いてホイは「駆け引き」のゲーム!
いかがでしたでしょうか。
あらゆるゲームにおいて勝敗を決める「運」と「実力」という要素。
単なるじゃんけんでは手の自由度も低く「運」が勝敗を決めるケースが大半ですが、あっち向いてホイになると爆発的に戦略が広がることが実感できたのではないでしょうか。
ぜひ今回紹介した戦略を意識して、仲のいい友達にあっち向いてホイを仕掛けてみてください。
給食の残り物や重要な役職をじゃんけんではなく、あっち向いてホイで奪い合う、そんなイベントを催してみるのも面白いかもしれませんね。